
『循環』の起点
天恵暮らしは、自然との循環の中に。

「なぜこんなに鳥が?」
亀岡の冬は日本海側ほどれはありませんが、京都全体の中で見ると、亀岡盆地の特徴でもあり、寒さや雪も厳しめになります。
無施肥を意識しはじめてからは、土のコンディションをどう作るかを考えるようになり、これまで春先に土を起こしていたのですが春先にはもう、土が固くなっているのが気になっていました。
そこで、あえて寒さが強くなってくる12月~2月にかけて、ある程度定期的に土を起こすことにしてみました。
もちろん雪が舞う日もありますので、そんな中での冬場の作業はなかなか体力に影響はしてきます。
そんなあるとき、無数の鳥たちがやってくることに気が付いたのです。
「子どもたちに安心、安全なものを食べさせたい。」
それが他界した妻が、この保津の地でやろうとしてきたことの中でも最も大きなテーマの1つでした。
大好きなハーブももちろん農薬を使うことなく育てていた妻は、日本人の主食となるお米についても同じ思いをもっていました。
「天恵暮らし」という自然との共生からいただける恵を大切にしながら暮らしていく形。
そこには、自らが主食も含めて育てていくということは外すことができない大切な要素でもありました。
その中で私は妻と「旭(朝日)米」を選択し、かつ、栽培中には農薬は使わない、肥料も有機肥料を少量のみという方針を立てて取り組んだのがこの「天寿菜菜 あさひ米」でした。
胸を張って安全なお米ですと言えるものを作り、子どもたちに与え、さらにそれがいろんなところで知ってもらえることを目標にしてきた妻は、この「天寿菜菜 あさひ米」が関西有数の百貨店で販売されることになったのを見届けることなく天国に還ってしまいましたが、私はさらに妻の夢を追求することも含めて、「無施肥」という領域に挑戦し、美味しく立派なお米が育てられることを2025年度米で実証することができました。
水がとても良質な亀岡ではあるので、それが理由の1つではあると思うのですが、健康に育つにはそれなりの養分は土に必要だと考えると、この圃場には何があるのだろうと思うなかで、ある冬の日に気付いたことがありました。
妻が望んだ「循環」。
私が「起点」になる。
鳥たちに与える。
鳥たちが与えてくれる。
冬になると、当然ながら動物たちの食べ物も、自然の中では少なくなっていきます。
ある日、冬場の土おこしをしていると、なんとなくいつも感じていたことがより強くなりました。
それが、冬場の土おこしのときには、なぜか鳥たちが無数にやってくるということです。
からす、スズメ、ときにサギなど。
「なんだか鳥が多いな」と思ってはいたものの、それが食べ物を求めて来ていたことに気付いたのは、いつしか耕運機で土を起こしていく場所に、次から次へと鳥たちが降りてくるようになったからです。
私が無害な人間だと何度か観察されてわかったのか、それとも空腹に我慢しきれずなのか、
まるで漫画か映画のように、私が耕運機を動かすうしろに、鳥たちが着地し大行列を作って土を漁っているのです。
そこで、はたと「掘り起こされた土の中にいた虫などを食べている」ということに気付くのです。
この圃場を、冬場の餌場と認識した鳥たちは、
いつしか、私の姿を見つけたら集まってくるようになってきたのです。
それも、数えきれないほどに。
そして、本当の気づきはここからでした。
耕運機が通ったあとに、白い帯のようなラインができること。
もうおわかりでしょう。
それは鳥たちの「糞」だったのです。

無農薬・無施肥のあさひ米の株

慣行農法のコシヒカリの株
春には土がフカフカになっていた。
鳥たちの糞は、耕された土に入っていきます。
そしてこの冬場に何度も土を耕すことで、糞は何度も土に入っていきます。
こうして、冬を越したあとの春の土は、恐らく微生物が糞を分解しながら働いてくれているのであるとしか思えないほど、フカフカになっていたのです。
冬場に土を起こさなければ、鳥たちは集まってこなかったでしょう。
これを繰り返さなければ、鳥たちはここを餌場と認識しなかったでしょう。
鳥たちに餌場を提供したことの恩送りかのように、微生物を活性化して、土を元気にしていきます。
その結果、自然の循環の中で、健康な土が育ち、守られているということがわかりました。
その起点こそ、「人間が鳥たちの餌のないときに、餌場を提供する」ということになった冬場の土おこしだったのです。
かくして、肥料を与えることなく、農薬も使うことなく、
今年も立派な、そして美味しい「あさひ米」が育ちました。
妻が望んだ世界を、今、自分が実現しているという実感があります。
自然の中の循環に、人は生き、生かされていること。
そのために、自らが「循環の起点」になることが大切であること。
天寿菜菜 あさひ米は、このような循環の中で育ち、同時にこれは米作り農家にとっても共有できる情報かもしれないと、こうして公式サイトの中でお伝えしてみることにしたのです。
うまくいくかはわかりません。
でも、こうして自然の循環を意識して米作りができる仲間が増えていくと、私だけでなく、妻も喜ぶだろうと思っています。
